MG0003試験:試験概要

本剤は、一部承認外の用法及び用量による臨床成績で評価され、承認されました。

そのため、承認されている「用法及び用量」と異なるデータが含まれます。

国際共同第Ⅲ相二重盲検比較試験(MG0003試験[検証的試験])

社内資料
国際共同第Ⅲ相二重盲検比較試験 MG0003試験(承認時評価資料)

Bril V et al.: Lancet Neurol. 2023; 22(5): 383–394.
(本試験はUCB Pharmaの資金提供を受けており著者に同社より研究資金や謝礼等を受領している者が含まれる)

試験概要

全身型重症筋無力症(gMG)患者を対象として、リスティーゴの臨床的有効性、安全性及び忍容性について評価する。

中等度から重度の症状[米国重症筋無力症研究財団(MGFA)分類のクラスⅡ~Ⅳa]を有し、免疫グロブリン静注療法(IVIg)又は血漿交換療法(PLEX)などによる追加治療が検討されているgMG患者200例(日本人患者13例を含む)

リスティーゴ7mg/kg群:66例、リスティーゴ10mg/kg群:67例、プラセボ群:67例

  • 18歳以上
  • スクリーニング時に既往歴又は過去の検査結果に基づくgMGの診断を示す文書記録を有する
  • スクリーニング時に抗アセチルコリン受容体(AChR)又は抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体陽性が既に確認されている
  • スクリーニング時にMGFA分類のクラスⅡ~Ⅳaに該当する
  • スクリーニング時及びベースライン時の両時点で、重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)総スコアが3以上(眼症状以外の項目で3以上)かつ定量的重症筋無力症(QMG)総スコアが11以上
  • スクリーニング時に体重が35kg以上
  • スクリーニング時又はベースライン時に、口腔咽頭筋もしくは呼吸筋に影響を及ぼす重度の筋力低下(MG-ADLスケールのGrade3)又は重症筋無力症クリーゼもしくは切迫クリーゼを有する
  • 血清中総IgG濃度が5.5g/L以下
  • 好中球絶対数が1,500cells/mm3未満

第Ⅲ相、多施設共同(カナダ、チェコ、デンマーク、フランス、ジョージア、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、ポーランド、ロシア、セルビア、スペイン、台湾及び米国)、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、3群、並行群間比較試験

本試験は、最長4週間のスクリーニング期間、6週間の治療期間(二重盲検下)、8週間の観察期間(盲検下)で構成された。

MG特異的自己抗体(抗MuSK抗体陽性又は抗AChR抗体陽性)別に層別化し、患者をリスティーゴ7mg/kg相当群(以下、7mg/kg群)、リスティーゴ10mg/kg相当群(以下、10mg/kg群)、プラセボ群に1:1:1の比で無作為に割り付け、リスティーゴ又はプラセボを1週間ごとに合計6回、腹部に皮下投与した。リスティーゴ7mg/kg群、リスティーゴ10mg/kg群におけるリスティーゴの投与量は下表に従い、体重カテゴリ別の固定用量(7mg/kg相当又は10mg/kg相当)とした。

体重 リスティーゴの投与量(mg)
リスティーゴ7mg/kg群 リスティーゴ10mg/kg群
<50kg 280 420
≧50kg~<70kg 420 560
≧70kg~<100kg 560 840
≧100kg 840 1,120
国際共同第Ⅲ相二重盲検試験(MG0003試験[検証的試験])の投与方法
補足)

治療期間中にレスキュー治療が必要となった患者はIVIg又はPLEXを受け、早期終了来院を完了した後に観察期間に移行した。レスキュー治療開始後はリスティーゴを投与しなかった。

レスキュー治療が必要となったため治療期間を完了せず、観察期間中に2回目のレスキュー治療開始が必要になった患者は、最後のIVIg又はPLEXを完了後2週間以上が経過している場合には、非盲検長期継続投与試験[MG0004試験又はMG0007試験]に移行できることとした。治療期間を完了し、観察期間開始後にレスキュー治療の開始が必要となった患者はすぐに非盲検長期継続投与試験に移行できることとした。IVIg及びPLEXを受けることを選択した患者は、観察期間の残りの来院を完了し、非盲検長期継続投与試験には参加できないこととした。レスキュー治療が必要となった以外の理由で治験薬投与を中止した患者は、非盲検長期継続投与試験への登録不適格とした。

主要評価項目
  • 43日目におけるMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量
副次評価項目
  • 43日目における以下の項目のベースラインからの変化量

    MGC総スコア/QMG総スコア/MG症状患者報告アウトカム(PRO)による「筋力低下疲労」スコア/MG症状PROによる「身体疲労」スコア/MG症状PROによる「球筋力低下」スコア

  • 43日目におけるMG-ADLレスポンダーの割合(ベースラインから2.0点以上の減少)
その他の評価項目
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点におけるgMG症状の悪化によるレスキュー治療(IVIg又はPLEX)の実施
  • 初回レスキュー治療までの期間
  • MG-ADLの奏効までの期間
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点におけるMG-ADL、MGC及びQMGレスポンダーの割合
  • 43日目までのいずれかの時点におけるMinimal symptom expression(MG-ADL総スコア0又は1)
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点におけるMG-ADL、MGC及びQMG総スコア(眼症状を含む全項目、及び眼症状を除く全項目)、並びにMG症状PROによる「筋力低下疲労」「身体疲労」「球筋力低下」「呼吸筋力低下」「眼筋力低下」スコアのベースラインからの変化量
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点における、患者による全般的重症度判定及び患者による全般的改善度判定のベースラインからの変化量
  • 43日目までのrevised 15 item Myasthenia Gravis Quality of Life(MG-QOL15r)及び5-level Euro Quality of Life 5 Dimension(EQ-5D-5L)スコアのベースラインからの変化量
  • 43日目におけるMyasthenia Gravis Impairment Index(MGII)総スコアのベースラインからの変化量
安全性
  • 治験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)
  • 治験薬の投与中止に至ったTEAE
薬力学
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点における血清中総IgG及びIgGサブクラス濃度のベースラインからの変化量及び変化率
  • 治療期間及び観察期間の各評価時点における血清中MG特異的自己抗体濃度のベースラインからの変化量及び変化率

有効性の解析は、特に指定がない限り、無作為化されたすべての患者からなる無作為化解析対象集団(Randomized Set:RS)を対象として実施した。安全性の解析は、RSのうち、治験薬の投与を1回以上受けたすべての患者からなる安全性解析対象集団(Safety Set:SS)を対象として実施した(MedDRA ver. 24.0を用いて集計)。また、薬力学の解析はSSを対象として実施した。

主要評価項目は、投与群、ベースラインのMG-ADL総スコア、地域、層別因子[抗AChR(+/-)又は抗MuSK(+/-)]、評価時期と投与群との交互作用を固定効果、患者を変量効果とし、ステージごとの反復測定混合効果モデル(MMRM)を用いた共分散分析によって解析した。MMRMは、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目を含み、反復測定に無構造の共分散構造パターンを用いた。各投与群(各ステージ)のt検定統計量から未調整のp値を算出し、これらのp値を用いて統合検定を実施した。試験終了時に2用量が存在することによる多重性は、Bonferroni法で処理した。この検定の棄却限界値は、標準正規分布の上位1.25パーセンタイルである(無益性基準は強制力がなく、ステージ1でα消費はないため、ステージ2でαを2用量に分配した)。有効性の主要評価項目は、レスキュー治療実施の中間事象が発生した患者では、仮想及び治療方針ストラテジーを用いたRSに基づき、中間事象発生時は、当該ストラテジーにより中間事象に対応したデータ補填を行った。43日目の前にTEAE又は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)もしくはCOVID-19関連以外の事象による投与中止又は試験中止の中間事象が発生した患者のデータは使用した。MG-ADL総スコアの欠測は、「ランダムな欠測」の仮定に基づいて対応した。

有効性の副次評価項目の連続変数は、いずれも主要解析のために定義された統合検定及びモデルを用いて解析した。評価項目の多重性に関する全体の有意水準を保持するため、順次階層的検定手順を適用した。

すべてのその他の有効性評価項目を記述的に要約した。また、投与量(280、420、560、840、1,120mg)別の解析も実施した。

主要評価項目及び一連の副次評価項目について、年齢、性別、人種、地域(北米、欧州、アジア、日本)、MG特異的自己抗体(ベースライン時及び過去の記録に基づく抗AChR抗体又は抗MuSK抗体)別のサブグループ解析を実施した。

人口統計学的特性
   
プラセボ群
(n=67)
リスティーゴ
7mg/kg群
(n=66)
リスティーゴ
10mg/kg群
(n=67)
全患者
(n=200)
年齢(歳)
年齢(歳) 平均値(SD) 50.4(17.7) 53.2(14.7) 51.9(16.5) 51.8(16.3)
中央値
(最小値, 最大値)
51.0(18, 85) 52.0(22, 89) 54.0(19, 81) 52.0(18, 89)
年齢区分※1、n(%)
年齢区分※1n(%) 18~<65歳 51(76.1) 49(74.2) 51(76.1) 151(75.5)
65~<85歳 15(22.4) 16(24.2) 16(23.9) 47(23.5)
≧85歳 1(1.5) 1(1.5) 0 2(1.0)
年齢区分※2、n(%)
年齢区分※2n(%) ≦18歳 1(1.5) 0 0 1(0.5)
19~<65歳 50(74.6) 49(74.2) 51(76.1) 150(75.0)
≧65歳 16(23.9) 17(25.8) 16(23.9) 49(24.5)
性別、n(%)
性別、n(%) 男性 20(29.9) 27(40.9) 32(47.8) 79(39.5)
女性 47(70.1) 39(59.1) 35(52.2) 121(60.5)
体重(kg)
体重(kg) 平均値(SD) 80.80(22.57) 79.56(25.52) 83.06(23.73) 81.15(23.88)
中央値
(最小値, 最大値)
80.00(39.7, 150.5) 78.00(37.7, 154.2) 76.60(46.9, 155.6) 78.00(37.7, 155.6)
人種、n(%)※3
人種、n(%)※3 アジア人 5(7.5) 9(13.6) 7(10.4) 21(10.5)
黒人 1(1.5) 0 4(6.0) 5(2.5)
ハワイ先住民又は
他の太平洋諸島の島民
1(1.5) 0 0 1(0.5)
白人 46(68.7) 41(62.1) 49(73.1) 136(68.0)
不明 14(20.9) 16(24.2) 7(10.4) 37(18.5)
地域、n(%)
地域、n(%) 北米 21(31.3) 21(31.8) 18(26.9) 60(30.0)
欧州 41(61.2) 36(54.5) 43(64.2) 120(60.0)
アジア(日本を除く) 1(1.5) 4(6.1) 2(3.0) 7(3.5)
日本 4(6.0) 5(7.6) 4(6.0) 13(6.5)
※1
EudraCTの年齢区分
※2
Clinicaltrials.govの年齢区分
※3
フランス及びカナダでは人種及び民族についてのデータ収集が禁止されている。
ベースラインの疾患特性(RS)
   
プラセボ群
(n=67)
リスティーゴ
7mg/kg群
(n=66)
リスティーゴ
10mg/kg群
(n=67)
全患者
(n=200)
ベースライン時のMGFAクラス分類、n(%)
ベースライン時の
MGFAクラス分類、n(%)
クラスⅡa 11(16.4) 13(19.7) 13(19.4) 37(18.5)
クラスⅡb 12(17.9) 16(24.2) 13(19.4) 41(20.5)
クラスⅢa 28(41.8) 21(31.8) 26(38.8) 75(37.5)
クラスⅢb 13(19.4) 13(19.7) 13(19.4) 39(19.5)
クラスⅣa 2(3.0) 3(4.5) 2(3.0) 7(3.5)
クラスⅣb 1(1.5) 0 0 1(0.5)
胸腺摘出の手術歴、n(%)
胸腺摘出の手術歴、n(%) あり 31(46.3) 32(48.5) 20(29.9) 83(41.5)
なし 36(53.7) 34(51.5) 47(70.1) 117(58.5)
MG-ADL総スコア
MG-ADL総スコア 平均値(SD) 8.4(3.4) 8.4(3.8) 8.1(2.9) 8.3(3.4)
中央値
(最小値, 最大値)
8.0(3, 16) 8.0(3, 18) 8.0(3, 16) 8.0(3, 18)
MG-ADL group、n(%)
MG-ADL group、n(%) ≧5 57(85.1) 55(83.3) 61(91.0) 173(86.5)
<5 10(14.9) 11(16.7) 6(9.0) 27(13.5)
QMG総スコア
QMG総スコア 平均値(SD) 15.8(3.5) 15.4(3.7) 15.6(3.7) 15.6(3.6)
中央値
(最小値, 最大値)
15.0(11, 23) 15.0(9, 27) 15.0(11, 27) 15.0(9, 27)
筋無力症クリーゼの既往、n(%)
筋無力症クリーゼの既往、n(%) あり 23(34.3) 19(28.8) 17(25.4) 59(29.5)
なし 44(65.7) 46(69.7) 49(73.1) 139(69.5)
不明 0 1(1.5) 1(1.5) 2(1.0)
罹病期間(年)
罹病期間(年) 平均値(SD) 9.418(9.348) 6.877(6.799) 9.561(9.895) 8.627(8.836)
中央値
(最小値, 最大値)
6.790(0.14, 48.94) 5.280(0.14, 33.09) 5.703(0.25, 46.44) 5.799(0.14, 48.94)
初回MG診断時の年齢(歳)
初回MG診断時の年齢(歳) 平均値(SD) 41.4(19.1) 46.6(16.0) 42.6(19.1) 43.5(18.2)
中央値
(最小値, 最大値)
38.0(12, 79) 46.0(13, 83) 40.0(11, 76) 44.0(11, 83)
過去の自己抗体の状態、n(%)
過去の自己抗体の状態、n(%) AChR+ 59(88.1) 60(90.9) 60(89.6) 179(89.5)
MuSK+ 8(11.9) 5(7.6) 8(11.9) 21(10.5)
ベースライン時の自己抗体の状態、n(%)
ベースライン時の
自己抗体の状態、n(%)
AChR+ 53(79.1) 56(84.8) 56(83.6) 165(82.5)
MuSK+ 8(11.9) 4(6.1) 4(6.0) 16(8.0)
総IgG濃度(g/L)
総IgG濃度(g/L) 平均値(SD) 10.20(2.61) 10.16(3.18) 9.67(2.61) 10.01(2.81)
中央値
(最小値, 最大値)
10.36(5.9, 16.5) 9.67(5.3, 21.3) 9.27(5.9, 17.0) 9.56(5.3, 21.3)

本剤の用法及び用量、特定の背景を有する患者に関する注意は以下の通り(電子添文から抜粋)

6.

用法及び用量

通常、成人にはロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)として下表に示す用量を1週間間隔で6回皮下注射する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。

体重 投与量
50kg未満 280mg
50kg以上70kg未満 420mg
70kg以上100kg未満 560mg
100kg以上 840mg
9.

特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)

9.5

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。IgG抗体は胎盤通過性があることが知られており、本剤は妊娠カニクイザルにおいて、胎児に移行することが確認されたが、新生児に有害な影響は認められなかった。また、本剤の投与を受けた患者からの出生児においては、母体から移行するIgGが低下し、感染のリスクが高まる可能性がある。

9.6

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒト乳汁中への移行は不明であるが、ヒト免疫グロブリンは乳汁中に移行することが知られている。