MG0010試験:試験概要

国際共同第Ⅲ相二重盲検試験(MG0010試験[検証的試験])

社内資料
国際共同第Ⅲ相二重盲検試験成績 MG0010試験(承認時評価資料)

Howard JF Jr. et al.: Lancet Neurol. 2023; 22(5): 395-406.
(本試験はUCB Pharmaの資金提供を受けており著者に同社より研究資金や謝礼等を受領している者が含まれる)

試験概要

全身型重症筋無力症(gMG)患者におけるジルビスクの有効性、安全性及び忍容性を評価する。

gMG患者174例(日本人患者16例を含む)

ジルビスク群:86例、プラセボ群:88例

  • 18歳以上75歳未満
  • スクリーニング時にgMG[米国重症筋無力症研究財団(MGFA)の重症度基準でクラスⅡ~Ⅳ]と診断
  • スクリーニング時に血清中抗アセチルコリン受容体抗体が陽性
  • スクリーニング時及びベースライン時のMG-ADL総スコアが6以上
  • 抗アセチルコリンエステラーゼ薬を10時間以上中止した状態でスクリーニング時及びベースライン時のQMG総スコアが12以上
  • スクリーニング時及びベースライン時の4項目以上のQMG総スコアが2以上
  • コルチコステロイドの用量がベースラインの30日以上前から変更されておらず、投与期間の12週間に変更予定がない
  • 免疫抑制剤がベースラインの30日以上前から変更されておらず(用量を含む)、投与期間の12週間に変更予定がない

第Ⅲ相、多施設共同(米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、スペイン、英国、日本)、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験

本試験は、スクリーニング期間(最長4週間)及び投与期間(12週間)から構成された。

国際共同第Ⅲ相二重盲検試験(MG0010試験[検証的試験])の試験デザイン

患者をベースライン時のMG-ADL総スコア(9以下又は10以上)、QMG総スコア(17以下又は18以上)、及び地理的地域(北米、欧州、及び東アジア)に基づいて層別化し、ジルビスク群又はプラセボ群のいずれかに1:1の割合で割り付け、ジルビスク0.3mg/kg又はプラセボを盲検下で1日1回12週間皮下投与した。ジルビスクは、下表に示す体重区分に従って各患者の体重に応じた固定量のジルビスクを含む自己投与用のプレフィルドシリンジ製剤として供給した。体重の重い患者(150kg超)又は軽い患者(43kg未満)については、メディカルモニターと相談のうえ個別に対応した。

最小目標用量(名目上)(mg/kg) 投与量(mg) 体重区分(kg) 用量範囲(mg/kg)
0.3 16.6 ≧43~<56 0.30~0.39
0.3 23.0 ≧56~<77 0.30~0.41
0.3 32.4 ≧77~150 0.22~0.42

継続投与試験(MG0011試験)の選択基準に適合している場合、すべての患者は12週間の投与期間終了時に継続投与試験でジルビスクの投与を受けることを選択できた。

主要評価項目
  • 12週におけるMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量
重要な副次評価項目
  • 12週におけるQMG総スコア、MGC総スコア、MG-QOL15r総スコアのベースラインからの変化量
その他の副次評価項目
  • 投与期間12週間における初回のレスキュー療法までの時間
  • レスキュー療法を受けず、12週にMSEを達成した患者の割合
  • レスキュー療法を受けず、12週にMG-ADL総スコアが3点以上低下した患者の割合
  • レスキュー療法を受けず、12週にQMG総スコアが5点以上低下した患者の割合
探索的評価項目
  • レスキュー療法を受けず、12週にMGFA-PISのMMを達成した患者の割合
  • 12週におけるWPAI:SHP、EQ-5D-5L及び視覚的アナログスケール(VAS)、Neuro-QoL SF Fatigueスコアのベースラインからの変化量
  • MG-ADL、QMG、MG-QOL15r、及びMGC総スコアのレスポンダー解析(レスキュー療法を受けなかった患者におけるベースラインからの変化量)
  • 12週におけるMG-ADL、QMG、MG-QOL15r、及びMGC構成スコア(眼筋、延髄、呼吸機能、並びに四肢及び脊椎機能サブスコア)のベースラインからの変化量
安全性
  • 治験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)の発現割合、など

有効性はmITT(modified intention to treat)集団を対象に解析した。mITT集団は、無作為化されたすべての患者のうち、治験薬を1回以上投与され、治験薬投与後1時点以上のMG-ADL総スコアを有する患者と定義した。主要評価項目は、12週におけるMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量について、ジルビスク群とプラセボ群間の優越性を比較し(両側、有意水準0.05)、治験薬、治験薬と来院の交互作用項、無作為化の層別因子[ベースラインのMG-ADL及びQMG総スコア、地理的地域(北米、欧州、及び東アジア)]、並びにベースラインのMG-ADL総スコアと来院の交互作用項を固定効果、患者を変量効果としたMMRM(mixed model repeated measures)共分散分析(ANCOVA)で投与群間の差を評価した。

副次評価項目の解析は、多重性を考慮し、試験全体における第一種の過誤を制御するため(両側、有意水準0.05)、2つの仮説族それぞれに対応した異なる検定手順を備えた並列型gatekeeping法を用いた。仮説族1には重要な副次評価項目を含み、固定順序法により12週におけるベースラインからの変化量をQMG総スコア、MGC総スコア、MG-QOL15r総スコアの順に検定した。仮説族1のすべての副次評価項目が統計学的に有意(両側、有意水準0.05)であった場合に、仮説族2(仮説族1を除くすべての副次評価項目)をHolm法(両側)で検定した。

連続変数で表される各副次評価項目(QMG、MGC、及びMG-QOL15r総スコアの12週におけるベースラインからの変化量)について、mITT集団を対象にMMRM ANCOVAで解析した。投与期間12週間における初回のレスキュー療法までの時間は、Time-to-Event解析を実施し、Kaplan-Meierプロットで図示した。レスキュー療法を受けずにMSEを達成した患者の割合は、治験薬を因子、ベースラインのMG-ADL総スコアを共変量としたロジスティック回帰で解析した。レスキュー療法を受けずに12週にMG-ADL総スコアが3点以上低下した患者及びQMG総スコアが5点以上低下した患者の割合は、治験薬を因子、ベースラインのMG-ADL及びQMG総スコア、並びに地理的地域(北米、欧州、及び東アジア)を共変量として解析した。

安全性はSS(治験薬を1回以上投与されたすべての患者)を対象に解析した。治験薬の初回投与時から治験薬の最終投与40日後(又は最終接触日のいずれか早い方)までに発現した有害事象(AE)を治験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)と定義し、発現した患者数及びその割合を投与群別に要約した(MedDRA ver. 24.0を用いて集計)。TEAEの安全性解析、並びに有効性の主要及び副次評価項目について、サブグループ解析を実施した。

年齢、性別、ベースライン時の罹病期間、ベースライン時のMGFA分類、ベースライン時のMG-ADLスコア、ベースライン時のQMG総スコア、地理的地域、民族、治療抵抗性の有無、クリーゼの既往の有無、胸腺摘除術歴の有無、ステロイドによる治療歴の有無、ベースライン時のステロイドの使用の有無、免疫抑制剤による治療歴の有無(ステロイドを除く)、ベースライン時の免疫抑制剤(ステロイドを除く)使用の有無、 IVIg、SCIg、又はPLEXによる治療歴の有無、胸腺腫の診断の有無、COVID-19流行期(2020年3月11日以降をCOVID-19の世界的流行中と定義)における登録タイミング、COVID-19流行期における12週の来院タイミングなど
人口統計学的特性
   
ジルビスク群(n=86)
プラセボ群(n=88)
全体(n=174)
性別、n(%)
性別、n(%) 女性 52(60.5) 47(53.4) 99(56.9)
男性 34(39.5) 41(46.6) 75(43.1)
人種、n(%)
人種、n(%) アメリカ先住民又は
アラスカ先住民
0 1(1.1) 1(0.6)
アジア人 7(8.1) 14(15.9) 21(12.1)
黒人 6(7.0) 7(8.0) 13(7.5)
ハワイ人先住民又は
その他の太平洋諸島住民
0 0 0
白人 66(76.7) 62(70.5) 128(73.6)
その他/混血 0 0 0
不明 7(8.1) 4(4.5) 11(6.3)
年齢、歳
年齢、歳 平均値(SD) 52.6(14.6) 53.3(15.7) 53.0(15.1)
中央値
(最小値、最大値)
54.5(21、75) 55.5(19、75) 55.0(19、75)
MGFA分類、n(%)
MGFA分類、n(%) クラスII 22(25.6) 27(30.7) 49(28.2)
クラスIII 60(69.8) 57(64.8) 117(67.2)
クラスIV 4(4.7) 4(4.5) 8(4.6)
発症時年齢、歳※1
発症時年齢、歳※1 平均値(SD) 43.47(17.35) 44.02(18.67) 43.75(17.98)
中央値
(最小値、最大値)
43.00(13.0、73.0) 44.50(9.0、73.0) 44.00(9.0、73.0)
罹病期間、年
罹病期間、年 平均値(SD) 9.34(9.47) 8.96(10.43) 9.15(9.94)
中央値
(最小値、最大値)
5.55(0.1、42.3) 4.75(0.2、51.9) 5.00(0.1、51.9)
胸腺摘除術歴有り、n(%)
胸腺摘除術歴有り、n(%)   45(52.3) 37(42.0) 82(47.1)
治療抵抗性gMG、n(%)※2
治療抵抗性gMG、n(%)※2   44(51.2) 44(50.0) 88(50.6)
MG-ADL総スコア
MG-ADL総スコア 平均値(SD) 10.3(2.5) 10.9(3.4) 10.6(3.0)
中央値
(最小値、最大値)
10.0(6、16) 10.5(6、19) 10.0(6、19)
QMG総スコア
QMG総スコア 平均値(SD) 18.7(3.6) 19.4(4.5) 19.1(4.1)
中央値
(最小値、最大値)
18.0(12、31) 18.5(13、36) 18.0(12、36)
※1
ジルビスク群:n=85、全体:n=173
※2
以下のいずれかの基準に該当した患者を治療抵抗性と定義:
  • Prednisone(本邦未承認)、アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロスポリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、タクロリムス、リツキシマブ、エクリズマブ、その他のコルチコステロイド、及びその他の免疫抑制療法のうち2種類以上の治療を1年以上受けている者

  • 上記のうち1種類以上の治療を1年以上受けており、かつ本試験登録の12ヵ月前から慢性的にPLEX、IVIg、又は皮下免疫グロブリン療法(SCIg)を少なくとも3ヵ月間隔で受けている者

MGの治療に対し、本邦未承認
gMGに対する前治療薬の概要(全体の10%以上で使用)(SS)
 
ジルビスク群(n=86)
プラセボ群(n=88)
全体(n=174)
Prednisone※1 77(89.5) 72(81.8) 149(85.6)
その他のコルチコステロイド 22(25.6) 21(23.9) 43(24.7)
アザチオプリン※2 33(38.4) 37(42.0) 70(40.2)
ミコフェノール酸※2 31(36.0) 26(29.5) 57(32.8)
IVIg 54(62.8) 57(64.8) 111(63.8)
IVIg、SCIg、又はPLEX 57(66.3) 63(71.6) 120(69.0)
シクロスポリン 10(11.6) 11(12.5) 21(12.1)
タクロリムス 9(10.5) 11(12.5) 20(11.5)
抗コリンエステラーゼ薬 84(97.7) 84(95.5) 168(96.6)

例数(%)

※1
本邦未承認
※2
MGの治療に対し、本邦未承認
ベースラインにおけるgMG治療薬の使用状況(全体の10%以上で使用)(SS)
 
ジルビスク群(n=86)
プラセボ群(n=88)
全体(n=174)
Prednisone※1 38(44.2) 33(37.5) 71(40.8)
その他のコルチコステロイド 21(24.4) 18(20.5) 39(22.4)
アザチオプリン※2 13(15.1) 18(20.5) 31(17.8)
ミコフェノール酸※2 17(19.8) 17(19.3) 34(19.5)
抗コリンエステラーゼ薬 74(86.0) 73(83.0) 147(84.5)

例数(%)

※1
本邦未承認
※2
MGの治療に対し、本邦未承認

本剤の用法及び用量、用法及び用量に関連する注意等は以下の通り(電子添文から抜粋)

6.

用法及び用量

通常、成人にはジルコプランとして下表に示す用量を1日1回皮下投与する。

体重 投与量
56kg未満 16.6mg
56kg以上77kg未満 23.0mg
77kg以上 32.4mg
7.

用法及び用量に関連する注意

本剤投与開始12週後までに症状の改善が認められない患者では、他の治療法への切り替えを考慮すること。

9.

特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)

9.5

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。