第2回 患者さんの治療満足度を上げる日常診療の工夫


(2022年11月26日実施)
多田
PASI100を治療目標とするためには、有効性の高い薬剤の処方の他に患者さんとの信頼関係を高めて治療満足度を向上させることも大切と考えます。皮膚科医と乾癬患者さんが信頼関係を築くために、先生はどのような点を心がけておられるのでしょうか?
Rubel
皮膚科医と患者さんでは乾癬に関する重症度の考え方が異なるので、信頼関係を構築させる第一歩として患者さんが乾癬の重症度をどのように判断しているのかを理解しなければなりません。皮膚科医はPASIやBSAなどの評価項目を用いて重症度を評価しますので、皮疹が発現している部位、大きさ、皮疹の状態(紅斑、浸潤、落屑)などをどうしても重視することになります。しかし、患者さんの視点では、見た目、瘙痒、QOLの低下、ストレスなどの改善が重要と考えます。
このような医師側の視点と患者側の視点の相違を表している2つの報告を紹介しましょう。欧米の皮膚科医を対象とした乾癬患者の重症度に寄与する最も重要な因子について調査した報告1)では、皮疹の発現部位と大きさがいちばん多く52.9%であるのに対して精神的影響とQOLは9%、瘙痒は7.4%、鱗屑は4.3%でした(図1)。
一方、欧米の乾癬/乾癬性関節炎を有する患者に対して同様の調査を行った報告2)では、瘙痒が最も高く38%、以下、鱗屑17%、白点11%、疼痛10%、紅斑5%と続きました(図2)。

この2つの研究が示唆していることは、皮膚科医は乾癬の病変部に思考が向くのに対し、患者さんの心は痒みや外見などに向いているのです。このギャップを埋めて患者さんに寄り添うことが大切です。
このように、患者さんは乾癬特有の症状に悩んでいます。ここで注意すべきことは、患者さんは個々に性格や生活様式、考え方が異なり、さらには乾癬の状態や併存疾患の有無、治療反応、忍容性なども多様です。すなわち、患者さんが考える治療ゴールにも個人差があることを考慮すべきです。
多田
患者さんに合った治療薬を選択する、いわゆるオーダーメイド治療が必要になるということだと思いますが、そのために必要な個々の患者さんのニーズを深掘りするための日常診療での工夫を教えてください。

Rubel
私は1日に50人ほどの患者さんを診ています。治療により症状の改善、安定、悪化などを注意深く診察するためにPASIスコアを毎回測定するとともに、患者さんには思っていることを自由に発言してもらうよう努めています。また、BMIが高い、顔や手など目立つ場所に皮疹があるなど、患者さんの特性に応じて悩んでいることを引き出すようなコミュニケーションを心掛けています。初診時には、特に患者さんの話に耳を傾け、コミュニケーションの中から社会的立場、性格、主訴などを分析し、どのような治療戦略をとるべきかを考えます。しかしながら、生物学的製剤が登場したことによって、診療が非常に楽になりました。既存の治療薬で思うような効果がでないときに生物学的製剤に切り替えると改善がみられた例があり、患者さんに感謝されることも少なくありません。また、短期で効果がみられた場合、患者さんとの信頼関係がより強固になった経験が多いため、PASI100を目標とした治療ゴールや有効性だけではなく、即効性も重要と考えています。

References
- 1)van de Kerkhof PC. et al.:J Eur Acad Dermatol Venereol. 29:2002-2010, 2015.
- 2)Lebwohl MG. et al.:J Am Acad Dermatol. 70:871-881, 2014.