骨折リエゾンサービスの好影響
骨折リエゾンサービス(FLS)とは
骨折リエゾンサービス(FLS)とは
骨折リエゾンサービス(FLS)とは、さまざまな職種の連携により、脆弱性⾻折患者に対する「⾻粗鬆症治療開始率」「治療継続率」を上げるとともに、転倒予防を実践することで⼆次⾻折を防ぐ取り組みです。
Fracture Liaison Serviceの頭文字をとった略語で、リエゾンとは「連絡係」「連絡窓口」「つなぎ」などを意味するフランス語です。
FLSの目的は二次性骨折の防止です。脆弱性骨折を起こした患者さんの、「骨粗鬆症治療開始率」「治療継続率」を上げ、リハビリテーションの視点から転倒予防を実践することで二次性骨折を防ぎ、骨折連鎖を断つことを目指します。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の薬物治療開始基準
骨粗鬆症の薬物治療開始基準
大腿骨近位部や椎体に脆弱性骨折がある場合、薬物治療を開始することが「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」に示されています
また、その他の脆弱性骨折(肋骨、骨盤、上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨)があり、骨密度がYAMの80%未満である場合にも、薬物治療を開始します。
なお、脆弱性骨折を起こしていなくとも、骨密度が低い場合は、FRAX®による10年間の骨折確率や大腿骨近位部骨折の家族歴をもとに、薬物治療開始の判断をします。
骨粗鬆症の診断
骨粗鬆症の診断・検査
骨粗鬆症の診断基準
「原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)」(日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会合同による原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会)によると、原発性骨粗鬆症は、脆弱性骨折の有無と骨密度により診断します。
脆弱性骨折がある人で、それが椎体骨折または大腿骨近位部骨折の場合、もしくはその他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満の場合、骨粗鬆症と診断します。
脆弱性骨折がない人でも、骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD以下であれば骨粗鬆症と診断します。
YAM:Young Adult Mean
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨強度が弱くなり、骨折するリスクが高くなる疾患です。
WHOでは、「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています。
日本での患者数は男性300万人、女性980万人、合計1,280万人と推計されています。
骨粗鬆症による骨折は、寝たきりや慢性腰痛、要介護の原因にもなります。
骨粗鬆症は女性に多くみられる疾患ですが、男女とも骨の健康を保ち、すべての年齢を通じて、骨粗鬆症を予防することが大切です。
骨の構造と機能
骨の構造と成分
骨の構造
骨は外側から順番に、骨膜、皮質骨、海綿骨、骨髄腔から成り立っています。
二次骨折予防の重要性
脆弱性骨折が健康や歩行能力、生存率に及ぼす影響
脆弱性骨折を起こした患者さんの二次性骨折を予防することはとても重要です。
なぜなら脆弱性骨折は、患者さんの健康度や歩行能力、死亡リスクに影響を及ぼし、骨折回数を重ねるごとに深刻さが増すためです。
健康への影響
橈骨遠位端骨折は、50歳代に起こることが多く、一時的に健康度が悪化しますが短期間で回復します。
60歳以降になると椎体骨折を起こしやすくなり、椎体骨折を繰り返すと、悪化した健康度が元には戻らなくなっていきます。
さらに、80歳頃に起こる大腿骨近位部骨折では健康度が非常に悪化し、その状態が維持されます。
脆弱性骨折を取り巻く現状
高齢化と骨折リスク
ここでは、日本の高齢化の進展とそれに伴い介護給付費が増加する現状について紹介するとともに、要支援・要介護となる原因の一つとして挙げられる骨折がどのようにそのリスクを高めてしまうのかについて解説します。
日本における高齢人口の割合
65歳以上の高齢人口は増加の一途をたどっています。
総人口に占める割合は2018年で28.1%でしたが、2040年には35.3%になると見込まれています。
5iに沿ったFLSの取り組み
FLSクリニカルスタンダードに沿った各ステージでの取り組み例
「日本版 二次性骨折予防のための骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」では、ステージごとに「実施が必須とされる項目」「実施することが推奨される項目」が定められています。
同スタンダードが提唱する5つの要素(5i)に沿った、各ステージでの取り組み例をご紹介します。
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FLSプロトコルの紹介
FLSプロトコルとは、脆弱性骨折を起こした患者さんが来院後、骨粗鬆症治療を開始し地域に戻るまでの各タイムラインにおける、職種別の活動の詳細についてまとめたものです。
各タイムラインにおいて、FLSのチームメンバーがそれぞれどのような介入を行うのかを一覧にまとめた表です。自施設のFLSの取り組みを可視化することで実施内容の漏れが防げ、ケアの標準化や新人教育にも役立ちます。
FLSクリニカルスタンダードとは?
「FLSクリニカルスタンダード」とは
「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」とは、FLSを実施するすべての施設が二次性骨折予防の取り組みを効率的に行うために示された、最低限必要な指標です。
一般社団法人日本骨粗鬆症学会とNPO法人日本脆弱性骨折ネットワークが著作学会となり、2019年6月に策定されました。
骨粗鬆症に関連する多くの学会および機関に支持されています。
