「FLSクリニカルスタンダード」とは
「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」とは、FLSを実施するすべての施設が二次性骨折予防の取り組みを効率的に行うために示された、最低限必要な指標です。
一般社団法人日本骨粗鬆症学会とNPO法人日本脆弱性骨折ネットワークが著作学会となり、2019年6月に策定されました。
骨粗鬆症に関連する多くの学会および機関に支持されています。
日本版 二次性骨折予防のための
骨折リエゾンサービス(FLS)
クリニカルスタンダード

- 著作学会
-
- エンドース学会
-
(五十音順)
脆弱性骨折の患者さんに対する骨粗鬆症の治療開始率と継続率を向上させるためには、
次の5つの要素(ステージ)が重要なポイントであると示されています。
ステージ1. 対象患者の特定(Identification)
ステージ2. 二次性骨折リスクの評価(Investigation)
ステージ3. 投薬を含む治療の開始(Initiation)
ステージ4. 患者のフォローアップ(Integration)
ステージ5. 患者と医療従事者への教育と情報提供(Information)
これら5つの要素(ステージ)は各要素の頭文字から、5i(ファイブ・アイ)と呼ばれます。
1~4の流れで行われ、5は、1~4のすべてのステージにおいて横断的に行われるべきであると考えられています。

また、FLSの取り組みを行うチームメンバーとして、医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、介護福祉士などが挙げられますが、どのような職種でチームを編成するかは、各施設の状況にあわせて決定することが重要であり、そのための連携教育も重要であると考えられています。

FLSの5つのステージ
1~5の各ステージにおいては、FLSクリニカルスタンダードの「可能な限り多くの病院において二次性骨折予防の取り組みを効率的に行える、最低限必要な指標を提供する」という目的の観点から、ステージごとに「実施を必須とする項目」「実施が推奨される項目」として記載、提唱されています。
FLS 5i
ステージ1 Identification 対象患者の特定
FLSによって治療されるべき脆弱性骨折の患者であることを特定し
FLSチームメンバーに周知させる
- 必須
-
- 50歳以上のすべての種類の脆弱性骨折患者を対象とする
※大腿骨近位部骨折・臨床椎体骨折の患者を最優先 - 入院患者、外来患者、または両者ともに対象とする
-
院内周知のための体制構築を行う
例)
対象患者のリスト化
電子カルテによる患者情報の共有
データベースの構築
- 50歳以上のすべての種類の脆弱性骨折患者を対象とする
- 推奨
-
- 対象患者の特定を可及的速やかに行う
ステージ2 Investigation 二次性骨折リスクの評価
FLSにより骨粗鬆症治療の対象となる患者の二次性骨折リスクを
確実に評価する
- 必須
-
- 画像診断またはFRAX®などのリスクアセスメント
ツールを用いて評価する
※胸腰椎単純X線、DXAを優先 - 続発性骨粗鬆症との鑑別診断を行う
例)一般血液生化学、Ca、P、25水酸化ビタミンDなど
(必要に応じて専門医と連携) - 転倒リスク評価を行う
例)転倒リスク評価表
- 画像診断またはFRAX®などのリスクアセスメント
- 推奨
-
- 二次性骨折リスク評価は骨折後できるだけ早期に行う
(少なくとも90日以内、「骨粗鬆症の予防と治療ガイ
ドライン2015年版」に基づく) - DXAを保有していない場合、中核施設と連携し評価する
- 認知機能評価を行う
例)MMSE
- サルコペニア評価を行う
例)アジアワーキンググループ(AWGS)のサルコペニア診断基準
- ロコモティブシンドロームの評価を行う
- 二次性骨折リスク評価は骨折後できるだけ早期に行う
ステージ3 Initiation 投薬を含む治療の開始
FLSにより骨粗鬆症治療の対象となる患者には投薬を含む治療介入を行う
- 必須
-
- 二次性骨折リスクの評価終了後すぐに薬物治療を基本的介入として行う
(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」を中心に) - 二次性骨折リスクの評価終了後すぐに転倒予防を基本的介入として行う
(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」を中心に)
- 二次性骨折リスクの評価終了後すぐに薬物治療を基本的介入として行う
ステージ4 Integration 患者のフォローアップ
患者が治療を継続し、治療効果を評価するためにフォローアップしていく
- 必須
-
- フォローアップを行い、
- 薬物治療
- 転倒発生の有無
- 二次性骨折状況
- 日常活動
- 生存状況
- フォローアップを行い、
- 推奨
-
- 退院後3〜4ヵ月、1年後の追跡フォローを行う
- 要介護度を参考にする
ステージ5 Information 患者と医療従事者への教育と情報提供
脆弱性骨折に関する病識と治療の重要性に対する認識を高める
- 必須
-
- 医療から介護まで、脆弱性骨折にかかわる全ての職種、患者・家族に対して
骨粗鬆症に対する知識の共有とFLSの意義について啓発する - 患者・家族に対して、次のことを行う
- 骨粗鬆症の病態、骨折との関連性、骨粗鬆症薬物治療の重要性を教育
(骨折の連鎖により重大な機能障害がもたらされる可能性を強調) - 転倒予防、栄養改善の指導を実施
- 骨粗鬆症の病態、骨折との関連性、骨粗鬆症薬物治療の重要性を教育
〜1~4のすべてのステージで実施〜
- 医療から介護まで、脆弱性骨折にかかわる全ての職種、患者・家族に対して
- 推奨
-
- 病院内にFLS委員会を設立する
- 退院後の施設間でネットワークを利用した連携を行う
- 多職種協働を学ぶ連携教育を行う
- 地域行政機関への啓発活動を行う
⽇本⾻粗鬆症学会、⽇本脆弱性⾻折ネットワーク.
⽇本版 ⼆次⾻折予防のための⾻折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード 第3版, 2020.より作成
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