てんかんと運転免許・福祉制度
てんかん患者と運転免許
てんかん患者において運転免許の取得が可能となる条件
- ・発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
- ・発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、x年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
一定期間(x年)後に臨時適性検査を行うこととする。 - ・発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、x年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
- ・医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
<準中型免許(準中型免許(5t限定)を除く)、中型免許(中型免許(8t限定)を除く)、大型免許及び第二種免許の場合>
てんかんに係る発作が、投薬なしで過去5年間なく、今後も再発のおそれがない場合
一定の病気等に係る運転免許関係事務に関する運用上の留意事項について(通達)(令和2年12月23日警察庁丁運発第232号)より作成
てんかん患者さんの自動車運転に関しては、道路交通法や自動車運転死傷行為処罰法に規制や罰則の記載があります。運転免許の取得には条件があり、これらを理解した上での患者さんへの情報提供が望まれます。運転適性の診断書を主治医が記載する必要がありますが、診断書が書きにくい場合には主治医に代わり、公安委員会が委嘱する専門医による臨時適性検査を行うことも可能なため、警察署あるいは運転免許センターの安全運転相談窓口に相談するように患者さんに提案することもできます。その際、診療情報などを提供し、円滑に検査が行われるようにすることが重要です。
てんかん患者が利用できる制度
- ・登録したてんかん診療の指定自立支援医療機関に限り、利用することが可能。(原則、医療機関・薬局は1ヵ所)
- ・診断書は主治医(診療科は問わない、指定自立支援医療機関)が記載。
- ・毎年更新手続きが必要。診断書の提出は2年に1回。精神障害者保健福祉手帳の診断書で兼ねることが可能。
- ・申請が認められると「自立支援医療受給者証」が交付される。
- ・受給者証に記載の医療機関に、自己負担上限額管理票と共に提示することで自立支援医療を受けられる。
所得区分(医療保険の世帯単位) | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)> |
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所得区分(医療保険の世帯単位)一定所得以上 | 市町村民税 235,000円以上 | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>20,000円※※令和6年3月31日までの経過的特例(「重度かつ継続の⼀定所得以上」の区分) |
所得区分(医療保険の世帯単位)中間所得2 | 市町村民税 33,000円以上 235,000円未満 | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>10,000円 |
所得区分(医療保険の世帯単位)中間所得1 | 市町村民税 33,000円未満 | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>5,000円 |
所得区分(医療保険の世帯単位)低所得2 | 市町村民税非課税(低所得1を除く) | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>5,000円 |
所得区分(医療保険の世帯単位)低所得1 | 市町村民税非課税(本人または障害児の保護者の年収80万円以下) | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>2,500円 |
所得区分(医療保険の世帯単位)生活保護 | 生活保護世帯 | 負担上限月額 <てんかん患者(重度かつ継続)>0円 |
※令和6年3月31日までの経過的特例(「重度かつ継続の⼀定所得以上」の区分)
厚生労働省ホームページ:自立支援医療
日本てんかん学会 編:てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版ーてんかんにかかわる医師のための基本知識ー, 診断と治療社, 2020より作成
てんかん患者さんは個々人の状況により、必要に応じた支援や介入を受けることが求められます。その一つに、医療・福祉サービスがありますが、それらを受けるには患者さん自身の申請が必要であるため、個々に応じた制度を紹介することが重要です。医療費については自立支援医療制度など、手帳制度については精神障害者保健福祉手帳など、生活については障害年金や障害福祉サービスなど、その他にもさまざまな医療・福祉サービスがあります。自治体独自のサービスもありますので、詳細はそれぞれの市区町村の窓口などにお尋ねください。
てんかん患者さんのQOL向上に向けて
てんかん治療のゴールは、臨床的に重大な副作用を生じることなく、てんかん発作を消失させるだけでなく、てんかん患者さんの身体面、精神面、教育面、社会面、心理面でのQOLを向上させることも含まれています。特にQOLの向上のためには、運転免許の取得や、必要に応じた医療・福祉サービスなどを含む、てんかん患者さん一人ひとりの生活に合った情報提供及び医療・福祉サービスを受けることも重要です。より包括的な医療の提供が患者さんのQOL向上につながると期待されます。
以下にもお役立ていただけるコンテンツがございますので、併せてご覧ください。
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