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小児期のてんかんと神経発達症

小児てんかんと神経発達症

小児てんかん患者さんでは、一般の小児と比較して、うつ病、不安といった精神疾患や、行動の異常、神経発達症(発達障害)の併存率が高いことが報告されています1)

小児てんかんにみられる併存症状(海外データ、アンケート調査)

小児てんかんにみられる併存症状(海外データ、アンケート調査)

【対象・方法】2007年に米国で行われた17歳以下の小児91,605例(てんかん患者977例を含む)を対象にした電話による全国聞き取り調査のデータを解析した。

Russ SA. et al: Pediatrics. 129(2), 256-264, 2012より作成

てんかんに併存する神経発達症

てんかんに併存する可能性がある神経発達症には、知的発達症や自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症などがあります2)。それらの併存症による記憶障害、不随意運動、精神症状が、てんかん発作そのものの症状と紛らわしいこともあります。

知的発達症

発達の遅れや学業不振などを認める

発達の遅れや
学業不振などを認める

自閉スペクトラム症

対人関係や集団生活が困難である

対人関係や集団生活が
困難である

注意欠如・多動症

不注意や多動、衝動性により日常生活に支障をもたらす

不注意や多動、衝動性により
日常生活に支障をもたらす

限局性学習症

読み書き計算などの一部の学習困難がみられる

読み書き・計算などの
一部の学習困難がみられる

小児てんかんの治療目標

小児てんかんの治療目標は、発作抑制だけでなく患者さんの日常生活におけるQOLを損なわないことです3)。小児てんかん患者さんのQOLは、発作だけでなく、家族、社会の状況、学校の理解、支援などの患者さんを取り巻く環境、併存疾患による症状などのさまざまな因子に影響されます4)。それらは、発作の重症度よりも患者さんのQOLに強く関連することも報告されています5)。てんかん治療を行う際には発作の状態を把握するにとどまらず、家庭生活、学校生活などで、患者さんご本人やご家族が感じている困難など、日常生活の様子を具体的に聞き取り、治療に反映させていくことが必要です。そのために睡眠や学習の状況など、最近の日常生活を患者さんやご家族に記入いただくことで、先生方とのコミュニケーションの一助となる「くらしの様子確認シート」をご用意しています。ご活用いただき小児てんかん患者さんの問診や診療にお役立てください。

小児てんかん患者さんのQOLに影響するさまざまな因子
1)
Russ SA. et al: Pediatrics. 129(2), 256-264, 2012
2)
高橋幸利 編: 「新 小児てんかん診療マニュアル」. P401-402, 診断と治療社, 2019
3)
満留昭久: てんかん研究. 23(3), 244-248, 2005
4)
Ronen GM. et al: Health Qual Life Outcomes. 1, 36, 2003
5)
Fayed N. et al: Neurology. 84(18), 1830-1837, 2015

以下にもお役立ていただけるコンテンツがございますので、併せてご覧ください。

JP-N-DA-EPI-2300007