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てんかんに併発する精神症状

てんかんと精神症状

大脳ニューロンの過剰興奮により一過性の発作症状を繰り返すてんかんは、精神機能にも影響を与える可能性があります。てんかん患者のうち30%程度に精神・行動の変化がみられ、一般人口よりも多いといわれています1)。国際抗てんかん連盟(ILAE)2017年分類おいて、精神・心理症状などの「併存症」が盛り込まれ、重要視されてきました。精神症状が患者さんのQOLに与える影響は大きく、発作頻度よりも抑うつの存在がQOLに影響を与えるという報告もあり2)、時には自殺リスクにもつながることがあるため、適切な診断と治療を行うことが求められます。

てんかん患者の精神疾患の有病率(海外データ)

  てんかん患者 一般人口
うつ病性障害 てんかん患者 17.4~80% 一般人口 1.5~19%
双極性障害 てんかん患者 3.03~8.25% 一般人口 0.3~1.5%
不安障害 てんかん患者 19~66% 一般人口 19.6%
強迫性障害 てんかん患者 14~22% 一般人口 2~13%
注意欠陥多動性障害 てんかん患者 30~40% 一般人口 15%
パーソナリティ障害 てんかん患者 21.15% 一般人口 5.9~13.4%
精神病 てんかん患者 6~10% 一般人口 1~7%
自殺 てんかん患者 13~25% 一般人口 1.4~6.9%

*企図・念慮も含む

【対象・方法】1990〜2011年に公表された文献をMEDLINEで、行動/情動/精神的併存疾患、自殺・てんかん、攻撃性・てんかん・抗てんかん薬治療・行動の用語に基づき、検索し、レビューした。

Hamed SA.: Expert Opin Drug Saf. 10(6), 913-934, 2011 より改変

併発する精神症状の種類

てんかんに併発する精神症状は、てんかん発作との時間的な関係により、「発作周辺期精神症状」と「発作間欠期精神症状」の大きく2つに分けられ、それぞれ治療戦略が異なります。また、抗てんかん薬の副作用や外科手術後などの「てんかん治療に関連する精神症状」もあります。てんかんによる学校や職場などの社会における差別、発作への恐怖、生活上の制限、対人関係の困難さ、抗てんかん薬の服薬の負担など心理社会的要因もその背景にあると考えられています。

てんかんに伴う精神症状

発作周辺期
精神症状
  • ・てんかん発作の直前、発作中、発作後数日ぐらいの間に生じる。
  • ・発作自体の活動、発作前の準備状態や発作後の脳内抑制過程など、発作が起こることによって生じる一連の過程に基づくものと考えられる。
発作間欠期
精神症状
  • ・発作との時間的関係が乏しい精神症状(発作間欠期精神病・気分障害、不安障害など)。
  • ・統合失調症や大うつ病性障害などの精神疾患の合併と考えられるもの、てんかんと精神症状に共通の脳の構造異常が推定されるもの、てんかんに伴う心理社会的要因によるものなど、多様である。
てんかん治療に
関連する精神症状
  • ・抗てんかん薬の副作用としての精神病、抑うつ、過活動、攻撃性・易刺激性など。
  • ・てんかん外科手術後に発生する精神病性障害や気分障害など。

その他:神経発達症など

山田 了士.: 総合病院精神医学. 26(1), 37-47, 2014
日本てんかん学会 編: 「てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版-てんかんにかかわる医師のための基本知識-」. P51-54, 診断と治療社, 2020 より作成

精神症状を併発するてんかんの診療

発作周辺期精神症状は、抗てんかん薬などのてんかんの治療で、発作を抑制させることにより、精神症状も改善させる可能性があります。発作間欠期精神症状には、てんかん発作の治療だけでなく、精神症状に対する治療も必要です。また、てんかん治療に関連する精神症状に対しては、原因となっている薬剤の減量、中止、他の抗てんかん薬への変更などの対応が必要です。抗てんかん薬による精神症状の出現は、薬による影響であることが見過ごされてしまうこともあり得ます。精神症状を併発するてんかん患者さんの治療においては、発作抑制効果のみならず、抗精神病薬を含む他の薬剤との薬物相互作用が少なく、精神面への影響が少ない抗てんかん薬を選択することも重要です。
精神科医へのコンサルテーションをする場合には、発作・脳波所見・抗てんかん薬の変更や追加などと精神症状に関係があるか、生活環境・知的能力・患者さんへのサポートの状況・対人状況などをわかる範囲で具体的に情報提供することが望ましいとされています。てんかんに併発するうつ状態については、スクリーニングツール(NDDI-E)が評価に有用です。普段のてんかん診療では発作の有無のみならず、睡眠、食欲、体調の問題など日常生活の様子を少しでもたずねておくことが大切です。最近の日常生活を患者さんやご家族に記入いただくことで、先生方とのコミュニケーションの一助となる「くらしの様子確認シート(成人編)」「くらしの様子確認シート(小児編)」をご用意しています。ご活用いただき問診や診療にお役立てください。

てんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度スクリーニングツール
(Neurological Disorders Depression Inventory for Epilepsy:NDDI-E)

以下の質問票は、自分でうつ病の可能性があるかを評価できるように作成されました。
スクリーニングツールの質問にすべて回答すると、点数が出るようになっています。
今日を含めて最近2週間のあなたの状態を最もよく表している項目を選択してください。

てんかん患者用の神経学的障害うつ病評価尺度スクリーニングツール
1)
日本てんかん学会 編: 「てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版-てんかんにかかわる医師のための基本知識-」. P51-54, 診断と治療社, 2020
2)
Boylan LS. et al: Neurology. 62(2), 258-261, 2004

上記にご紹介した「くらしの様子確認シート」以外にもお役立ていただけるコンテンツがございますので、併せてご覧ください。

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