CQ3-2 新規発症の部分てんかんでの選択薬はなにか
要約
第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨される。
第二選択薬としてフェニトイン、バルプロ酸、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ラコサミド、ペランパネルが推奨される。
解説
新規発症てんかんでの抗てんかん薬治療は、通常単剤で治療を開始する。薬剤の選択は、発作型およびてんかん診断をもとに患者の個別条件を勘案して行う。抗てんかん薬は少量で開始し、発作が抑制されるまで漸増していくのが基本である。最初の抗てんかん薬で発作が抑制されない場合、てんかん診断の見直し、服薬状況の確認、最大忍容量に達しているかの確認を行う。最初の薬剤(第一選択薬)が無効と判断した場合、次の薬剤(他の第一選択薬もしくは第二選択薬)を投与する(表1)。
2021年7月の時点で本邦では、クロバザム、ガバペンチン、トピラマートは他剤との併用として認可されている。
薬剤名 | 略号 | 主な作用機序 | 主な副作用 |
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第一選択薬 | |||
薬剤名:カルバマゼピン | 略号:CBZ | 主な作用機序:電位依存性Naチャネル抑制 | 主な副作用:めまい、複視、眼振、失調、眠気、低ナトリウム血症、発疹、血球減少、肝障害、SJS、DIHS、TEN |
薬剤名:ラモトリギン | 略号:LTG | 主な作用機序:電位依存性Naチャネル抑制 | 主な副作用:眠気、めまい、複視、発疹、血球減少、肝障害、SJS、DIHS、TEN |
薬剤名:レベチラセタム | 略号:LEV | 主な作用機序:SV2A結合 | 主な副作用:めまい、頭痛、精神症状(不機嫌、易怒性など) |
薬剤名:ゾニサミド | 略号:ZNS | 主な作用機序:Naチャネル阻害、Caチャネル阻害、GABA増強、CA阻害 | 主な副作用:眠気、無気力、食欲減退、発汗減少、尿路結石、発疹、肝障害 |
薬剤名:トピラマート | 略号:TPM | 主な作用機序:Naチャネル阻害、Caチャネル抑制、GABAA増強、興奮性アミノ酸酸受容体抑制、CA阻害 | 主な副作用:眠気、無気力、食欲減退、発汗減少、尿路結石 |
第二選択薬 | |||
薬剤名:フェニトイン | 略号:PHT | 主な作用機序:電位依存性Naチャネル抑制 | 主な副作用:めまい、複視、眼振、失調、眠気、発疹、血球減少、肝障害、SJS、DIHS、TEN |
薬剤名:ガバペンチン | 略号:GBP | 主な作用機序:Caチャネルに結合し伝達物質遊離調節 | 主な副作用:眠気、めまい、倦怠感、頭痛、複視、ミオクローヌス |
薬剤名:バルプロ酸 | 略号:VPA | 主な作用機序:GABAAを介した抑制の増強、グルタミン酸を介した興奮の阻害 | 主な副作用:血小板減少、肥満、脱毛、振戦、利尿、フィブリノーゲン低下、肝障害、急性膵炎 |
薬剤名:フェノバルビタール | 略号:PB | 主な作用機序:GABAA-Cl-ベンゾジアゼピン受容体、Na・Caチャネル抑制、グルタミン酸受容体阻害 | 主な副作用:眠気、鎮静、不穏、興奮、多動、失調、発疹、肝障害、血球減少 |
薬剤名:クロバザム | 略号:CLB | 主な作用機序:GABAAを介した抑制の増強 | 主な副作用:眠気、流涎、失調、行動異常、気道分泌過多、発疹 |
薬剤名:クロナゼパム | 略号:CZP | 主な作用機序:GABAAを介した抑制の増強 | 主な副作用:眠気、流涎、失調、行動異常 |
薬剤名:ぺランパネル | 略号:PER | 主な作用機序:非競合的AMPA受容体阻害 | 主な副作用:眠気、失調、精神症状 |
薬剤名:ラコサミド | 略号:LCM | 主な作用機序:Naチャネル阻害(緩徐な不活化を促進) | 主な副作用:眠気、失調 |
CA:炭酸脱水酵素、TEN:toxic epidermal necrolysis、DIHS:drug induced hypersensitivity syndrome、SJS:Stevens-Johnson syndrome
- 1.クロバザム(マイスタン)、ガバペンチン(ガバペン)、トピラマート(トピナ)は、2021年7月の時点では、本邦では他の薬剤との併用での使用で承認されている。
- 2.トピラマート(トピナ)は欧米では焦点および全般発作両者に承認されているが、本邦の2018年2月時点での承認は部分発作のみである。
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