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CQ3-5 精神症状のリスクを有する患者の選択薬はなにか

要約

①難治てんかん、辺縁系発作、精神障害の家族歴や既往のある例では、精神症状合併のリスクがあり、抗てんかん薬の多剤併用、急速増量、高用量投与に注意する。
②うつ病性障害、双極性障害、不安障害、精神病性障害をもつ人では、それぞれに使用を避けるべき抗てんかん薬や、使用を考慮してよい抗てんかん薬がある。

解説(一部改変※1

抗てんかん薬に起因する精神症状があり、見過ごされていることがある。エトスクシミド、ゾニサミド、プリミドン、高用量のフェニトイン、トピラマート、レベチラセタムなどは、急性精神病を惹起することがある。強力な抗てんかん薬を急激に高用量投与すると交代性精神病が生じ、ベンゾジアゼピン系薬物の急激な離脱により急性精神病が生じることがある。フェノバルビタールによるうつ状態や精神機能低下、エトスクシミド、クロナゼパム、ゾニサミド、トピラマート、レベチラセタムによるうつ状態、クロバザムによる軽躁状態が報告されている。レベチラセタムによる攻撃性の亢進、ラモトリギンによる不眠・不安・焦燥も報告されている。

・難治てんかん、辺縁系発作、精神障害の家族歴や既往のある例では、精神症状合併のリスクが高い。

・うつ病性障害をもつ人は、フェノバルビタール、ゾニサミド、トピラマート、レベチラセタムの使用を避け、ラモトリギン、ラコサミド※2の使用を考慮する。

・双極性障害をもつ人は、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、オクスカルバゼピンの使用を考慮してよい。

・不安障害をもつ人は、ラモトリギンやレベチラセタムの使用を避け、ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬やガバペンチン、ラコサミド※2の使用を考慮する。

・精神病性障害をもつ人は、フェニトイン、エトスクシミド、ゾニサミド、トピラマート、レベチラセタムの使用を避ける。

・抗てんかん薬起因性精神症状の予防には、強力な抗てんかん薬の追加投与や変更は時間をかけて行い、服薬コンプライアンス維持のための指導を行う。

精神障害併存例に使用を考慮してよい、あるいは使用を避けるべき抗てんかん薬
  うつ病性障害 双極性障害 不安障害 精神病性障害
使用を避ける うつ病性障害
PB、PRM、ZNS、TPM、LEV
  不安障害
LTG、LEV
精神病性障害
PHT、ESM、ZNS、TPM、LEV
使用を考慮してよい うつ病性障害
LTG
双極性障害
PHT、CBZ、LTG、OXC
不安障害
CZP、CLB、GBP
 

[Perucca P, Mula M. Antiepileptic drug effects on mood and behavior: Molecular targets. Epilepsy Beh. 2013; 26(3):440-449.より]

  • ※1「てんかん診療ガイドライン 2018」の表記を一部変更。
  • ※2ビムパット添付文書 8. 重要な基本的注意(抜粋)
    8.4 易刺激性、興奮、攻撃性等の精神症状があらわれ、自殺企図に至ることもあるので、本剤投与中は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。[8.5、15.1参照]

日本神経学会「てんかん診療ガイドライン」作成委員会 編:「てんかん診療ガイドライン 2018追補版」P.32-33, 医学書院, 2018

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