小児てんかんの問診
小児期に発症するてんかん
小児期に発症するてんかんには、年齢に依存して発症するてんかん症候群があり、一定の年齢を過ぎれば発作が消失する自然終息性のものや、治療に反応しにくいものなどさまざまです。年齢や発作型に基づいて最善の治療選択を行うためには、てんかんそのものの診断に加えて、発作型やてんかん症候群の正しい診断が重要です。
小児てんかん患者さんでは、日常診療において保護者から病状を聴取することが多いですが、神経発達の遅滞がないか、保育園・幼稚園・学校などで自分らしい生活を送れているかなど、行動の観察や患者さん本人との直接のコミュニケーションから情報を聴取することも、信頼関係の構築に重要です1)。
難治性てんかん 疾患情報(日本新薬 医療関係者向けサイト)
てんかん症候群の発症年齢
占部良介、三牧正和: 日本臨牀. 80(12), 1973-1977, 2022.
てんかんの診断と問診
てんかんは、発作型やてんかん症候群によって治療方法や経過が異なるため、適切な治療を考える上で正確な診断が重要です。特にてんかんの診療は、身体所見から得られる情報や診察時に発作を目撃する機会が少なく、発作間欠期の脳波などの検査結果に異常を認めない場合もあります。よって、病歴の聴取や患者さんの背景情報、発作が起こったときの様子や普段の生活での違和感や困りごとなどを聴き取る「問診」が正しい診断につながる大切な要素です。
問診では「いつ頃から、どこで、何をしている時に、どのような症状が起きたか?」を具体的に聴き取り、既往歴、アレルギーの有無、家族歴、社会歴などのてんかんの背景にある疾患の可能性を推測していきます。そして問診により「てんかんらしいか否か」を推測し、てんかんらしいと判断された場合、必要な脳波検査、神経画像検査、血液検査などを実施し、問診と検査結果から総合的に判断し、診断を行います2)。
小出泰道: 「“てんかんが苦手”な医師のための問診・治療ガイドブック」 P.10-11, 医薬ジャーナル社, 2014.より作成
治療中の患者さんへの問診
小児てんかん患者さんは、てんかんを持たない小児と比べて、うつ病、不安、注意欠如・ 多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)といった併存症のリスクが高いことが報告されています3)。こうした患者さんのQOLは、てんかんそのものだけでなく、併存症状や、家族や社会、学校の理解、支援など取り巻く環境によっても影響を受け、発作の重症度よりもそれらの要因が患者さんのQOLに強く関連するということが報告されています4)。また治療に使用している抗てんかん薬の副作用によっても、精神症状や眠気などの症状がみられることがあり、それらが友人関係のトラブルや学業成績の低下の要因になっている場合もあります。そうした精神症状は、患者さん本人もご家族も気づきにくいことがあります。そのため、日常診療において発作の状況を把握するだけにとどまらず、家庭生活、学校生活などで患者さん自身やご家族が感じている困難などを具体的に聴取するための一助として「くらしの様子確認シート 」をご用意しています。ご活用いただき小児てんかん患者さんの問診にお役立てください。
くらしの様子確認シート 小児編での問診で確認するポイント
- 1)
- 占部良介、三牧正和: 日本臨牀. 80(12), 1973-1977, 2022.
- 2)
- 小出泰道: 「“てんかんが苦手”な医師のための問診・治療ガイドブック」 P.10-11, 医薬ジャーナル社, 2014.
- 3)
- Russ SA. et al: Pediatrics. 129(2), 256-264, 2012.
- 4)
- Fayed N. et al: Neurology. 84(18), 1830-1837, 2015.
以下にもお役立ていただけるコンテンツがございますので、併せてご覧ください。
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